専門家からも懸念の声が上がっている。獣医師で「まねき猫ホスピタル」の石井万寿美院長は「コーイケルホンディエの遺伝病が増えてしまうのでは」と指摘する。
遺伝病とは遺伝子の変異によって引き起こされる病気だ。限られた地域の中で同じ品種の動物の繁殖が繰り返されるなかで近親交配が進み、遺伝病が出てくるという。
先に紹介したように日本国内のコーイケルホンディエはおよそ160頭だ。環境省令によって、雌犬の交配は6歳以下とされている。また、不妊治療を受けている犬もいるはずだ。これらの状況を踏まえると、日本で子犬を産める雌犬は30頭以内、雄犬も同じくらいだろうと石井院長は見る。
「ブリーダーが注意をすれば、病気の原因となる遺伝子を引き継ぐ犬を減らすことができますが、悪徳ブリーダーが金もうけのために遺伝病のことを考えずに、無理な繁殖を繰り返す恐れがあります。いま私の病院で脊髄(せきずい)の遺伝病があるコーギーを診ていますが、この病気は後ろ足から歩けなくなり、最終的には呼吸器がマヒし、死に至ります。残念ながら治療法はありません。遺伝病の問題は、犬の命が危険にさらされるだけではなく、犬種全体の命にもかかわってくる問題だと思います」(石井院長)
日本ではこれまでも特定の犬種が人気を集めることがたびたびあった。
1980年代後半からスタートした人気漫画の影響で、シベリアン・ハスキーブームが起きた。シベリアン・ハスキーはしつけの難しい犬種だったこともあり、その後、飼育放棄が相次いだことなどが大きな問題にもなった。