都市緑化の意義は十分認めつつも、より広範囲の生態系への影響も考慮する必要がある、というわけだ。
都市間競争で重要な「緑豊かな自然環境」
実際、都内では大規模再開発が目白押しで、その多くが「緑」をアピールしている。
東京都港区の虎ノ門、麻布台、六本木にまたがる約8.1ヘクタールの敷地に11月24日に開業する「麻布台ヒルズ」。6千平方メートルの中央広場を含む約2.4ヘクタールの緑地を確保している。この圧倒的な緑を配置する背景には、グローバルな都市間競争の激化がある。
麻布台ヒルズの開発を手掛けた森ビルの担当者は「グローバルプレーヤーが求めているのは立派なオフィスだけではありません。家族を含めた生活、教育、文化、環境なども重要なテーマです」と強調する。海外のグローバル人材のニーズを満たす重要な要素の中には、国際水準の住宅や高度な医療機関、インターナショナルスクールなどと並び、「緑豊かな自然環境」も含まれるのだ。
環境に配慮したサスティナブルな土地活用は国内外の各種認証を取得する上でも大きなポイントになる。国土交通省は再開発にあたって公園整備やビルの壁面緑化などを効果的に進めているかを判定、評価する認証制度を来年度にも新設する方針だ。背景には、こうした認証取得が市場に評価され、緑地化に熱心な企業への投資が進むことへの期待がある。
とりわけ、株主から高度な社会的責任を求められる外資系企業は認証の有無を重視してビジネス拠点を選ぶ傾向が強い。開発業者にとっては、ハイクラスのテナントに入居してもらうためにも、「緑」は不可欠な要素なのだ。
もちろん、都市に緑を増やすトレンドは日本だけではない。横張教授は「都市に森や緑を再生する取り組みは先進国を中心にものすごい勢いで広がっています」と話す。