ガザ地区からイスラエルに向けて発射されたロケット弾(2023年10月23日、AP/アフロ)
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 パレスチナ自治区「ガザ」での戦闘はますます厳しくなっている。なぜイスラエルとパレスチナのイスラム組織「ハマス」の間で戦闘が続くのか、その原因は何か。戦史・紛争史研究家の山崎雅弘さんの『新版 中東戦争全史』(朝日文庫)から、一部を抜粋、再編集して紹介する。

【写真】イスラエルの攻撃で荒廃したガザ地区

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北と西の両面で脅威への対応を迫られたイスラエル

 二〇〇六年一月二五日にガザ地区と西岸地区で実施されたパレスチナ自治政府の総選挙において、ハマスの候補者は予想外の大勝を収め、定数一三二議席の過半数に当たる七六議席を獲得した。

 ガザ地区と西岸地区に住むパレスチナ人の多くは、それまでパレスチナ自治政府の根幹を担ってきたファタハの幹部に対し、汚職と腐敗で私腹を肥やす一方、難民の生活改善には全く努力していないとの不信感を募らせており、総選挙でハマスに投じられた票の大部分は、ファタハに対する批判票であったと言われている。

 同年二月一六日、パレスチナ自治政府の新首相に就任したハマス幹部のイスマイル・ハニヤが、就任演説で「イスラエル国を承認せず、武力闘争路線を継続する」との宣言を行うと、イスラエルの首相代行(同年四月一四日付で首相)で元エルサレム市長のカディマ幹部エフード・オルメルトも「ハマスとは交渉しない」として態度を硬化させた。

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山崎雅弘

山崎雅弘

山崎雅弘(やまざき・まさひろ) 1967年、大阪府生まれ。戦史・紛争史研究家。政治や民族、文化、宗教など、様々な角度から過去の戦争や紛争を分析・執筆。著書に、『[新版]中東戦争全史』『[新版]独ソ戦史』『[新版]西部戦線全史』『「天皇機関説」事件』『1937 年の日本人』『[ 増補版]戦前回帰』『日本会議』『歴史戦と思想戦』『沈黙の子どもたち』など多数。

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二〇〇六年六月のハマスの攻撃