
AERAの将棋連載「棋承転結」では、当代を代表する人気棋士らが月替わりで登場します。毎回一つのテーマについて語ってもらい、棋士たちの発想の秘密や思考法のヒントを探ります。32人目は、船戸陽子女流三段です。AERA 2023年11月20日号に掲載したインタビューのテーマは「私の家族」。
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11月7日。船戸陽子は女流公式戦の対局に臨んだ。
「おかげさまで久しぶりに勝ちました。今週の『しいたけ占い』で、牡牛座はベージュがラッキーカラーだったので、ベージュのワンピースを着ていって。『しいたけ占い』は独特の言い回しが好きで、ほんと毎週楽しみなんですよね。毎週月曜更新で、午前中から『いつ更新されるかな』って何度もリロードしてるぐらいファンなんです(笑)」
女流棋士としての仕事が一段落すれば、ソムリエとしてワインバーを開く。
「対局の前日は基本的にお休みにして、終わった日の夜には、勝っても負けても開けています。負けたら悔しいんですけれど、お店にお客さんがいれば、気がまぎれます」
店では自身の好きな音楽をかけている。
「その日の天候とかによってかける曲は変えたりしてます。ジャズだと最近はジョン・コルトレーンが多いかな。ある方から『コルトレーン好きな女性って初めて見た』って言われたんですけど、男女は関係ないと思います(笑)。『マイ・フェイバリット・シングス』聴いてるうちに『そうだ、京都行こう』と思って、行ってきました。あ、旅行も大好きです。昔はそれこそ1人でふらっと海外にも行ってたんですけど、コロナ禍でだいぶライフスタイルが変わって。母方の伯父は、外資系の銀行に勤めながらジャズメンでもありました。私の母は武蔵野美術大学出身で、いっぱい家に画集とかあって。色彩的感覚みたいなのはたぶん、母から知らず知らずのうちに学びました。私がアート・ブレーキーの『モーニン』をかけてたら、母が『あ、その曲いつもね、ムサビの寮で口ずさんでる子がいたのよ。おさげの女の子で、その曲を口ずさみながら、階段を下りていくの』って。映画みたいな情景を語ってきたりして」