一族はみんな「のめりこむオタク気質」という船戸陽子。自身は将棋とワインのプロになった。「盤の上にもボトルの中にも宇宙がありますね」(撮影/横関一浩)

「私は高校生ぐらいから、宅録で打ち込みとかやってました。テクノとかハウスです。コロナ禍で家にずっといたとき、海外の音楽フェスの映像をずっと見てて、それに飽きたら自分でDJをやってたんですよ。そしたら家人が、私にDJの才能がすごくあると思いこんじゃったのね。ベルギーで『Tomorrowland』っていう音楽イベントがあるんだけど『Tomorrowlandに行けんじゃね?』って言い出したの。もしこれをお読みの関係者の方がおられたら、オファーお待ちしています、なーんてね(笑)。将棋で例えると、アマチュアからスタートして、いきなり竜王戦で1組に上がるみたいなものですよ。『行けるわけないだろ!』って話です(笑)。お店で一人のときは、DJやってます。昔はレコードとかCDとかいっぱいないとできなかったけど、いまはiPad一つでできるので」

 1999年、女流棋士発足25周年のイベントでは、バンドを組んで演奏を披露した。

「本田小百合さん(現女流三段)がギター、中倉宏美さん(現女流二段)がベース、中倉彰子さん(現女流二段)がボーカルで、私がキーボードでした。『ヘイ・ジュード』と『レット・イット・ビー』だったかな。将棋とは関係ないメンバーのバンドで、吉祥寺のライブハウスでレニー・クラヴィッツのコピーをしたり。若い頃は中島みゆきさんの曲は、業が深すぎて怖いと思ったり、シャンソンのよさもわかんなかった。だけどここ10年でわかるようになって。『年を取る』って、そういうことかなと思うんです。四十になってわかったことがいっぱいあります」

(構成/ライター・松本博文)

AERA 2023年11月20日号

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