警察官僚出身で警視庁刑事だった澤井康生弁護士によると、私人逮捕とは、逮捕権を持たない一般人も、要件を満たせば逮捕状を持たずに容疑者を逮捕できることを刑事訴訟法で認めたもの。
主に「現行犯か、犯行の直後だと明らかなとき」に限られる。
分かりやすく例えると、今まさに目の前で誰かがぼこぼこに殴られているとき、もしくはその直後だ。電車内で痴漢を発見した場合も、それにあたるという。
ただ、不当に容疑者を押さえつけたり殴ったりした場合は傷害罪や暴行罪。不当にその場から移動させなかった場合は逮捕・監禁罪に問われる可能性も出てくるため、慎重な判断が必要になる。
澤井弁護士は、まず杉田容疑者の事件について、
「女性を転売ヤ―と間違えた容疑者に仕立て上げた、ただの『えせ現行犯逮捕』です。この事件をもって、私人逮捕を議論してはなりません」と強く指摘。
そのうえで、こうした「私人逮捕」と称した活動を行うユーチューバーが、
勝手に容疑者らしき人物と接触し、動画を撮影する行為自体には違法性はないと解説する。例えば、転売ヤーとあえて接触を試みて動画を撮る「おとり捜査」のような真似をしても、それに問題はないという。
ただ澤井弁護士は、
「私人逮捕と称する動画を撮影することと、それを動画サイトやSNSに投稿することは全く別の問題です」とくぎを刺す。
仮に実際に犯罪を行っていたとしても、人物を特定できる形で投稿すれば名誉毀損に当たる可能性が出てくるという。「さらに、お金儲けが目的だと公益性がなく、違法性がないとは言いづらくなるのです」
今後、同じような動画の投稿者が罰せられる事態が続くのか。