元朝日新聞記者 稲垣えみ子

 元朝日新聞記者でアフロヘアーがトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

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 大阪から仕事で上京した大好きな友人2人と飲んだ。日本酒が縁で知り合った仲なので、場所はもちろん美味しいお酒が飲める店。カウンターを埋めた地元下町のおっちゃんおばちゃんの横でわいわいきゃっきゃと酔っ払う。

 でも今回の本題はそのことではなく。

 待ち合わせ時間が急遽30分後ろ倒しになり、すでに電車に乗っていた私はその古い下町をぷらぷらして待ったんですが、ふと目に留まったのが商店街の漬物屋さん。店頭にずらりと並ぶ漬物が壮観で(こういうお店、本当に見なくなりました)、しかも大好きな沢庵一本が100円台と良心的すぎる価格。おばちゃんに「好きなの選んでいいよ」と言われて一番デカイ一本を指差し、ついでにべったら漬けも購入。こりゃ良い買い物をしたとほくそ笑んでいたら、おばちゃんが「テレビ出てた人?」「よかったらこれも食べて」「私が作ってるの」と、これまたずらりと並んでいた惣菜を数品包んでくださった(テレビに出るとたまにこのようなことがある。大した人物でも何でもないので申し訳ないやら恥ずかしいやらで恐縮するわけだが、せめてもの礼儀としてこんな時は決して遠慮せず、えー本当ですかめっちゃ嬉しいと、大喜びで包みを奪取する私です)。

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稲垣えみ子

稲垣えみ子

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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