
今季の阪神タイガースが見せた「支え合う」野球は、初の日本一に輝いた1985年とはひと味違った。優勝後の狂騒も令和の時代ならではのようだ。AERA2023年11月20日号より。
【写真】なんだか泣ける。。4番大山にベンチから声援を送る阪神の選手たち
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阪神タイガースが38年ぶりに日本一を成し遂げた歓喜から幾日が過ぎ、虎ファンのテンションもひとまず落ち着いたころだろうか。
振り返ってみれば、今年の阪神はとにかく強かった。3月末のペナントレース開幕から快調に飛ばして首位を独走し、9月に18年ぶりのリーグ優勝を決めると、オリックス・バファローズとの関西決戦となった日本シリーズも勝ち抜き見事、日本一に輝いた。
12球団一の1、2、8番
今年の阪神は全員野球だった。オリックスの山本由伸、ソフトバンクの柳田悠岐、ヤクルトの村上宗隆、巨人なら坂本勇人など、各チームには野球ファンでなくとも名前は聞いたことがあるスターがいるものだが、阪神には“名実ともに”突出した選手はいない。
もちろん、今季、最優秀防御率のタイトルに輝いた村上頌樹や最多セーブの岩崎優、盗塁王の近本光司、最多安打の中野拓夢ら、タイトルホルダーたちがそろっている。ただ、全国区の知名度かと言われると、ちょっと首をひねるところかもしれない。しかし、結果的にはそうしたチーム構成が日本一への道を開いた。スター選手に頼るのではなく、投手陣は先発、リリーフともに持ち場で黙々と仕事をこなし、打線は1番から9番までがそれぞれに役割を全うした。
阪神OBのミスタータイガース、掛布雅之さんは9日に発売したAERA増刊のインタビュー企画でこう語っている。
「巨人の原辰徳監督が『今年は1、2、8番にやられた』と話していました。1年間固定して戦えた1、2番コンビと木浪(聖也)の8番は12球団ナンバーワンでしょう。クリーンアップより警戒される1、2、8番なんて記憶にない。下位打線で作ったチャンスを上位で返すことが本当に多かったですね」