道頓堀の戎橋には多くの警官が配置されたが、多くの人たちが集まり、阪神の日本一を喜んだ

23日に優勝パレード

 対して、85年である。

 日本一を決めた翌11月3日の朝日新聞をめくると、「トラの夏 熱狂ゴール」の見出しとともに、ファンが道頓堀川に飛び込む様子が生き生きと描写されている。

〈夕やみとともに群衆は二千人にもふくれあがった。そのなかで、パンツ一枚になった高校生が「高校生活の最後や」と叫びながら、橋のたもとから道頓堀川に飛び込んだ。「あと一人、あと一人」のコールに送られて、もう一人の若者が川へ。十数人が後から続いた。最初から着替えをバッグに詰めて参加し、洋服姿のまま飛び込んだ人もいた〉

 道頓堀川へのダイブはこの時が“起源”らしい。

 4日の朝日新聞には阪神の選手たちの大阪への凱旋を伝える記事の隣に、「トラファン大暴れ」の見出し。優勝した夜、タクシーが群衆にひっくり返されたり、警官が殴られたりしたとある。喜びのあまりか、ただの便乗犯かはわからないが、トンデモな暴れっぷりで当時の狂騒がよくわかる。

 おおらかだった時代に比べれば、多少ファンはおとなしく見えるかもしれない。ただ、日本シリーズ第7戦で見られたスタンドのファンの涙や絶叫は、85年当時に負けず劣らず激熱だった。今月23日には優勝を祝うパレードが大阪市と神戸市で行われる。優勝の興奮はしばらく続きそうだ。(編集部・秦正理)

AERA 2023年11月20日号

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