私自身は日常生活でスマホが手放せないですし、いろいろなところでAIを利用していると思いますが、最近は音楽や仕事のアイデアを考えるときにはiPadの手書きメモを使っています。ふとしたアイデアが浮かんだときにすぐにメモできるように日頃からiPadを持ち歩いています。感覚的に自由に書くことで発想が広がるし、手を動かすという身体性を伴うことで脳も活性化される気がするからです。日々状況は変わる世の中なので、デジタルでもアナログでも、どちらが良いと決めつけるのではなく、意味や目的を意識して時代に合った活用をすることが大事だと思います。
Q. 音楽の世界でもAIによる作曲や演奏も実現しています。廣津留さんなら、AIをどんな風に活用しますか?
A. 私は自分が演奏をする側なので、音楽の演奏に関してはAIを使う機会はまだないと思います。作曲の際は微妙なところですね。AIが生み出すものはゼロからではなくて、既に存在するものがベースになっていると思うし、たとえ音の組み合わせが無数にあったとしても、人は単にランダムに生成されたものを求めていないと思うんです。
ただ、パフォーマンスを上げるために使うのはアリかもしれません。たとえば野球の投球フォームを解析するシステムみたいに、歴代のバイオリンの巨匠たちがどんな姿勢で演奏していたかなどをAIに解析してもらって、彼らの演奏に近づくためにはどうしたらいいかアドバイスをもらうとか。あるいは、弦と弓が何%ずれているかなど、自分の演奏を改善するためには使ってもいいかなと思います。
作曲も、完全にAI任せではなく、自分のメロディーや考えをアルゴリズムに入れることによって音楽で表現してくれるのであれば使ってみたいかも。また、最近ではマシーンラーニングなどAIの技術で音源からジョン・レノンの声を抽出し、ビートルズの新曲が完成された例もありましたよね。目的に合わせた活用の仕方を考えた上では、AIの音楽分野における可能性は期待できると思います。
構成/岩本恵美 衣装協力/BEAMS