ターゲットは国内外の富裕層だ。オフィス・マンションを問わず、日本の不動産購入にあたって海外の取引先の意識は「東京一択」だと井出さんは言う。
「東京の認知度が国際的にずば抜けて高いことが背景要因に挙げられますが、大阪や名古屋などと比べてもこれだけ継続的に面的な広がりのある再開発が進んでいるのは国内では東京以外にありません。東京一極集中が進むなか、将来性を考えた時に東京のアセット以外は考えられないという判断だと思います」
【港区 虎ノ門・麻布台エリア】
都心で国内外の富裕層が集まるエリアといえば港区。虎ノ門、麻布台、六本木にまたがる約8.1ヘクタールの敷地に11月24日に開業予定の「麻布台ヒルズ」が、まさに「コンパクトシティ」を標榜している。
東京の国際競争力強化
東京タワーの北西約400メートル。カバーのついたエリア表示や引っ越し業者のトラックが横付けされ、「街」の始動が秒読み段階にあるのが分かる。超高層ビル3棟のうち、最も高い64階建ての「森JPタワー」は、東京タワーと肩を並べる約330メートルで、大阪市のあべのハルカス(高さ約300メートル)を抜いて、日本一の高さだ。
今なぜ、都会の真ん中に「コンパクトシティ」を造るのか。この質問に、開発を手掛ける森ビルは、30年以上前から「首都・東京が国際都市間競争に勝ち抜かなければ日本の未来はない」との認識のもと、グローバル企業やグローバルプレーヤーから「選ばれる都市」になるために必要な都市再生に取り組んできた経緯を説明。そしてこう続けた。
「グローバルプレーヤーが求めているのは立派なオフィスだけではありません。家族を含めた生活、教育、文化、環境なども重要なテーマです。彼らのニーズを満たすのは、国際水準の住宅、ホテルや文化施設、ショップやレストランなどの商業施設、医療機関や教育機関、緑豊かな自然環境など多様な都市機能が徒歩圏内に集約された、まさに麻布台ヒルズのようなコンパクトシティです」