目につくのは緑の多さだ。6千平方メートルの中央広場を含む約2.4ヘクタールの緑地を確保。この圧倒的な緑に包まれた環境の中に、オフィスやレジデンス、インターナショナルスクール、予防医療センター、フードマーケット、デジタルアートミュージアムといった「都市の中の都市」としての機能を配している。
森ビルは、麻布台ヒルズの誕生で虎ノ門ヒルズ、六本木ヒルズ、アークヒルズなどの開発エリアがつながり、相乗効果によって東京の国際競争力をさらに強化できる、との考えだ。
再開発エリアの外側の住民はどう感じているのだろう。近隣の商店街を歩くと、飲食店で働く40代女性からはこんな声も聞いた。
「うちの店は地元の古いお客さんが多いので、また雰囲気が変わっちゃうね、と嘆く声も聞かれます」
「都市再生」によって新旧住民の意識にギャップが生じる面は否めない。都内屈指の再開発エリアとなった状況を地元・港区はどう受け止めているのか。
米軍へリポートの存在
武井雅昭区長は「定住人口の確保」に努めるとともに、国際水準のオフィス環境の整備や外国企業の進出など「国際ビジネス交流拠点」としての役割を担う重要性を指摘。その上で、再開発事業については「(今は)老朽化した建物の更新期にあたり、都市基盤の整備や防災、緑化などの環境にも配慮した住宅、業務、商業、工場などが共存するまちが実現するよう計画的に指導・誘導しています」と回答した。
ただ、港区は「23区で唯一」の事情も抱えている。ヘリポートを併設した米軍施設「赤坂プレスセンター」(港区六本木)の存在だ。旧日本陸軍の駐屯地が戦後、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)に接収され、現在に至る。米軍ヘリは日米地位協定で日本の航空法の適用を除外されているため、超高層ビルが立ち並ぶ都心上空で日常的に低空飛行を繰り返しても処罰の対象にならない。区には長年、米軍ヘリの騒音や家屋の振動、離着陸や飛行途中の事故への懸念などが寄せられているという。
武井区長は近年の再開発による「環境の変化」を踏まえ、こんな懸念を吐露する。
「米軍ヘリポート基地周辺には2003年に六本木ヒルズ、07年に東京ミッドタウンといった超高層ビルが立ち並び、基地周辺の半径600メートルの範囲では、12年に11棟だった高さ60メートル以上の建物が23年10月時点で15棟になりました。こうした開発で、まちに住む人や集う人が着実に増えていることから、環境面での影響や安全への不安は増しています」
区は根本的な解決策として米軍ヘリポートの早期撤去を求めている。(編集部・渡辺豪)
※AERA 2023年11月13日号より抜粋