「私たちは、ある人やあるグループについて、何歳かという基準やステレオタイプに基づいて決めつけている」と話すアップルホワイトさん=9月、東京都内(撮影/丹内敦子)
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 日本ではあまり耳にしない「エイジズム(年齢差別)」。米国では人種差別、性差別に続く、第3の差別とも言われる。米国でのエイジズムの状況や話題について聞いた。AERA2023年11月13日号より。

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 エイジズムという言葉は、1969年に米国の老年学者であり、米国立加齢研究所の初代所長であるロバート・バトラー氏が提唱したものだ。平均寿命が延びるなか、世界はエイジズムに厳しい目を向け始めている。国連は2020年、「Healthy Ageing(健康的な高齢化)の10年」を採択。課題の一つに、年齢と高齢化に対する考え方や行動を変えることを挙げた。世界保健機関(WHO)も21年、エイジズムに関する報告書を発表している。

年齢で「決めつける」

 そうしたなか日本で、米国の作家で活動家アシュトン・アップルホワイトさんの『エイジズムを乗り越える』(ころから)が出版された。まずはエイジズムとはどういうものか。来日したアップルホワイトさんに聞くと、「年齢による差別や偏見のことだ。私たちは、ある人やあるグループについて、何歳かという基準やステレオタイプに基づいて決めつけている。つまり、ある集団に属する人は皆同じだと考えること」。

 さらに、このステレオタイプが往々にして間違っているとし、「特に年齢に関しては、長く生きるほど、それぞれの違いが大きくなる。人のことをよく知らずに、他の人と同じだと考えることは、その人を傷つけることになる」と話す。

 エイジズムは高齢者に対するものとはかぎらない。若者へのエイジズムもある。WHOの報告書では、企業など組織内で若者の意見が軽視されたり、若いがために経験が浅いことを理由に昇進や就職で不利になったりするケースがあるとしている。

 エイジズムに厳しい米国では就職の際に出す履歴書に年齢を書く欄がないといい、定年も設定されていない。ところがそんな米国でも最近、「年齢」が話題になっている。一つは来年の米大統領選を巡ってだ。

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