「ある人は『エイジズムだと分かっているが、バイデンは年を取りすぎている』と言う」(アップルホワイトさん)
ただしこの1年ほどの間に、新聞などでエイジズムが見出しになり、公の場で討論される機会が増えたことから、多くの人がエイジズムを認識し、そのバイアスを理解して会話しているという。アップルホワイトさんは「候補者に年齢は関係ない。その思想の質や政治的な実績で判断するべきだ」と主張する。
「年甲斐もない」と批判
ハリウッドでもエイジズムが議論を呼んだ。俳優ニコール・キッドマンが雑誌の表紙撮影で着用した衣装が争点になった。彼女はブラトップにミニスカート、ハイソックスを身に着けていて、一部から「年甲斐(がい)もない」と批判された。これにキッドマンは「私はただ挑戦し続けたかった。楽しかった。それが私の選択だった」などと反論したのだった。
アップルホワイトさんは「特に年配の女性に対して、これを着ろ、これを着るなという声がたくさん出る。そうした声は女性の外見を取り締まる力になっている。誰もが生涯、着たいものを着るべきだ」と言う。
ハリウッドでは年配の女性俳優が主要な役を演じる映画が少ないことにも不満が出ている。「#MeToo」運動がハリウッドに端を発して世界的な連帯に広がったことから、エイジズムの議論がハリウッドで活発になることをアップルホワイトさんは歓迎する。
著書で「ジェンダー・クィア(自らの性のあり方について、特定の枠に属さない人)にならってエイジ・クィアになりたい」と書くアップルホワイトさん。そもそも老化を恐れるから差別や偏見が生まれるとし、日本の読者にこう訴える。「私の本を読んでもらえば、老化への恐れは減り、どうして(老化をめぐって)脅かされるのか、ということに注意深くなる。そうなれば心は解放され、自分にもっと自信を持てるようになる」
(朝日新聞記者・丹内敦子)
※AERA 2023年11月13日号