このように、ここ数年はFAに関して何かと話題が多いが、日本の制度はまずメジャーと比べて大きな違いがあることを抑えておく必要があるだろう。それはFAになる条件を満たしていても、選手自身が「宣言」しなければFAにならないという点だ。最近では少なくなったが、かつては宣言したうえでの残留は認めないという球団もあった。こうなった経緯については様々な背景があるが、選手会としては自動的に自由契約になることを避けたいという思惑もあったと言われている。自動的にFAにならないうえで、期間を短縮して補償制度もなくなるということは、選手側の要望が強すぎると感じている球団関係者も多いのではないだろうか。

 ただそれでも移籍の活性化や、選手としての旬を逃さずにメジャーに挑戦できるようにする仕組みも必要であることは確かだ。昨年オフには現役ドラフトが初めて行われ、12人の選手が移籍したが、わずか1年で半数の6人が自由契約となっている。これを見ても球団にとってあまり必要ではない選手を提出したという印象は否めない。

 移籍しやすい仕組みにすると、スター選手は揃ってメジャーに移籍し、日本のプロ野球に魅力がなくなるため、それは避けるべきだという主張もあるが、日本人選手がメジャーを席巻することで日本球界に与えるプラスの方が大きいのではないだろうか。実際、大谷翔平(エンゼルス)の活躍は野球を志す少年の増加に繋がっているはずだ。また、力のある選手が移籍することによってレギュラーポジションが空き、その座を狙う若手による競争が活性化することも期待できるだろう。

 もちろん選手をどんどんメジャーに送り出すということだけを目的とするのが良いというわけではない。選手は指導者、球団経営にかかわる部分でメジャーから多くのものを吸収して、NPBとしての価値を高めるような努力も当然していくべきだろう。

 選手、球団がそれぞれの主張をぶつけることは当然のことではあるが、お互いの立場を超えて、野球界全体が発展するためにはどうするべきかという、高い視座での協議が行われていくことを望みたい。(文・西尾典文)

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。
 

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