トップはやはりS&P500。20年で240万円が1153万円、約4.8倍だ。2位は米国株の時価総額99%をカバーする「全米株式」1134万円。3位は米国株に加えて日本以外の先進国の株が入った「先進国株式インデックス」911万円。「全世界株式(オール・カントリー)」は5位で816万円だ。
ナスダック2千万円
ここで本誌は野尻さんに、米国株の中でもアップルやマイクロソフトなどIT系株式の比率が爆上がりする「eMAXIS NASDAQ100インデックス」の積み立て試算を追加で頼んだ。結果は、1万円×20年で240万円の投資が2098万円。米国株の中でも値動きの激しいところに突っ込めば、S&P500(1153万円)よりもっと強烈な利益を得られていた。ハイリスク・ハイリターンとはまさにこのこと──。
過去の数字を見ると米国株がすごいことはわかる。それでも全世界株式を選ぶ層は「米国株の勢いが長期間は続かないかも。ならば、世界中に分散しておこう」と考えているのだろう。結局、S&P500と全世界株式のどちらを選ぶか(どちらを多めに買うか)は「米国株のここから先の成長をどこまで信じるか」で決めるとよさそうだ。
米国株を「主体に」
米国株の今後について経済のプロはどう見ているか。楽天証券経済研究所の香川睦さんは前向きな見解だ。米国株の優位性は、企業が株主の資金を活用し、どれくらい利益を上げているかを示すROE(自己資本利益率)に表れているという。
「主要株式市場別の23年の予想ROEを比べると米国企業が17.6%と突出して高い。ちなみに日本の企業は8.7%で、米国の半分にも達していません。米国企業は効率的に稼いでくれるという意味で、ポートフォリオでは米国株を主体に入れておくことをすすめます。米国は先進国で唯一、総人口と労働人口ともに増え続けています。新たな技術革新が次々に起こる点も強みといえるでしょう」
米国株「だけ」でなく「主体に」と香川さんは表現した。
「S&P500や全米株式は米国株だけに投資しますが、先進国株式には約70%、全世界株式には約60%の米国株が含まれています。どれを買っても米国株メインで投資していることに変わりはないわけです。もちろん、S&P500や全米株式のインデックス投資信託を通じて『米国株だけ』の積み立てをするのも、悪くありません」
香川さんも「どちらがいい」という明言は控えた。プロでも正解がわからない(言えない)のである。もしあなたがまだ迷っているなら、S&P500と全世界株式を半々で積み立ててもいい。その場合は米国株の比率が全体の8割程度に上がる。全体から見た米国株の比率をコントロールするという意味での“両方買い”は悪くない。(経済ジャーナリスト・向井翔太、編集部・中島晶子)
※AERA 2023年11月6日号