大阪府大阪市「山王市場通商店街」。西成区の再開発が進んでいないエリアにごっそりと残る昭和(撮影/山本有)

 SNSで届くコメントなどからも、いまレトロな商店街に惹かれる人が多いことを実感するという。なぜなのだろうか。

 山本さんは、レトロな商店街を前にすると「いま撮らないと消えてしまう」という思いに駆られると言う。そういった「儚さ」に、山本さんが撮影した写真を見た人たちも惹かれるのではないかと分析する。

「閉塞感を持ってしまいがちな今の時代背景もあると思います。レトロな風景が、自分が幼く何も悩みがなかった時代、若くて夢に溢れていた時代の記憶を呼び起こすツールになっているのかもしれません」
 

大阪府大阪市「山王市場通商店街」。西成区の再開発が進んでいないエリアにごっそりと残る昭和(撮影/山本有)

 Z世代の若い人たちをも引き付ける力がある、とも語る。

「昭和の建物の建築様式やデザインは、いまなら『無駄だ』と排除されるような独特の凝ったものが多いんです。そんな『無駄という名の芸術』が醸し出す艶に、理屈抜きで惹かれているのかなと感じています」

 自分が生まれる前の時代のレトロなものにグッとくるのは、なぜなのか。その気持ちが「とてもよくわかる」と話すのは、メディア史が専門の茨城大学教授、高野光平さん(51)だ。

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