更年期症状や更年期障害に対しての医療的な対処法は、この10年で十分に確立されています。例えば、ホルモン補充療法のような婦人科における治療法が代表ですし、そのほかにも、エストロゲンに似た作用を期待できるエクオールというサプリメントをとるとか、漢方薬をチョイスするといった方法があげられます。運動や睡眠時間の確保、肥満の改善などの生活習慣の改善も大切です。

 ただ、産婦人科医として「もったいないな」と感じるのは、多くの女性が、困っている状態をそのままにしてしまっていることです。更年期がすぎればなんとかなるだろうという思いから、我慢しているケースが少なくありません。

 あるいは、自分のからだに起きている変化や不調の原因が、ホルモンの変動によるものなのかも、とは思いつかないこともあるでしょう。そのために、できるはずの対策をとらないままになってしまうのは、本当にもったいないと感じます。

 なんらかの改善策を探すというアクションを起こすためには、困っていることを「解決すべき課題」だと認識することが、非常に大事なのです。

 みなさんに知っておいていただきたいのは、閉経後、40年間も生きられる時代に私たちは生きている、ということです。40年といえば、生理がある年数とほぼ同じです。更年期をむやみに怖がるのではなく、「どうしたら、閉経後もいいかたちで年齢を重ねていけるかな」と考えるほうが、前向きにすごせる気がしませんか?

(構成/長瀬千雅、ブックデザイン/鈴木千佳子)

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