選手層のアップも見込まれる。W杯直後の9月から10月にかけて行われたアジア大会には、21人中20人がW杯不出場の“2軍”メンバーで臨んだが、結果は他国に力を見せつけての優勝。そこからパリ五輪予選のメンバーに追加招集されたMF中嶋淑乃(24歳、サンフレッチェ広島)に加え、MF谷川萌々子(18歳、JFAアカデミー福島)、DF古賀塔子(17歳、JFAアカデミー福島)の2人が注目の人材。谷川と古賀の2人は、今夏のW杯にトレーニングパートナーとして参加してレギュラーメンバーを唸らせるプレーを連発したことでも知られており、チームの雰囲気を知っている。アジア大会で傑出した働きを見せたことで、早期の“飛び級”でのなでしこジャパン入りも現実味を帯びてきたと言える。
2021年10月からチームを指揮する池田太監督の評価も高く、戦術面だけでなく、一体感を感じさせるチーム作りは好感が持てる。W杯終了後のアルゼンチンとの親善試合で熊谷を中盤アンカーに置いた4-1-2-3の新システムを採用して8-0の大勝を収めるなど、チームを停滞させることなく進化させていく手腕も持っている。W杯で自信を掴んだ上で、主力選手たちの個々のレベルアップ、若い新戦力の台頭が見込まれることで、パリ五輪に臨む際には、間違いなくW杯の時以上の強さを身に付けているはずだ。
ライバル国を見ると、長く女子サッカー界のトップを走ってきたアメリカ、ドイツが今夏のW杯で早期敗退(ドイツはグループリーグ敗退)し、日本が屈したスウェーデンは、準決勝でスペインに1-2で敗れた。そして決勝戦は、スペインが1-0でイングランドに勝利。この結果を見ると、例えグループリーグであろうともスペインを4-0で下した日本にも、間違いなく力とチャンスとあったと言える。そして、この「優勝」の可能性は、来夏のパリ五輪ではさらに高まっているはずだ。(文・三和直樹)