常見陽平氏(本人提供)

バイトがやめない方法をマニュアル化

 しかし、理不尽な職場に疑問を抱きつつも、耐えしのんで出勤し続けてきた。ユウタさんの周りにもバ畜のごとき働き方をしている友人たちがいるが、「文句を言う子はあまりいない」という。

「みんな、『それが普通だし、お店も大変そうだし』って言うんです。お店に同情するなよ! と思いつつ、でも気持ちはわかるんですよね。僕もバイトを辞める理由を探すけど、ひどいパワハラがあるわけでもないし、待遇を理由に辞めるのもなーと思っちゃう。本当はお店が悪いのにそう思えなかったり、そもそも気づかなかったりして、労働力が搾取(さくしゅ)されているんだろうなと感じます」

 こうした“搾取”は、なぜ起こるのか。働き方評論家で千葉商科大学准教授の常見陽平氏は、日本社会の二つの問題を指摘する。

 一つめは、「バイトがいないと成立しないビジネスモデルを作り上げてしまった」ことだという。

 安い給料で社員なみのパフォーマンスをあげてもらえれば、企業としては非常に“おいしい”。しかし、少子化で若者が減り、コロナ禍を機に退職したスタッフの穴埋めが間に合わない店も多い今、人手不足は深刻だ。

 そこで、大手チェーン店などでは、バイトを辞めさせないためのマネジメント法がマニュアル化されているという。名前は「さん」付けで呼ぶ、敬語で接する、「お客さんから君の接客をほめられたよ」などと積極的にほめて承認欲求を満たす、といった具合だ。

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素直で無批判な学生たちがバ畜になる