アルバイトにすべてを搾取される“バ畜”というワードが大学生の間で広がっている。写真はイメージ(GettyImages)

 “バ畜”という言葉を聞いたことがあるだろうか? 会社のためにまるで家畜のようにがむしゃらに働かされている人を意味する“社畜”という言葉があるが、“バ畜”はそのアルバイト版。これが最近大学生たちの間で広まっているという。学業やプライベートをなげうってまでバイト漬けの日々を送る“バ畜”になってしまう事情と、その背景を取材した。

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「僕はバ畜だと思います」

 大手家電量販店の携帯電話売り場でアルバイトをしている、大学3年生のユウタさん(仮名)は、力なくそう笑った。

 ユウタさんはもともと、飲食店でのバイトを渡り歩いてきたが、どの店でも「給料が安いわりに仕事がハード」であることに嫌気が差していた。個人経営の居酒屋では、店長の代わりに1日中店番をするだけでなく、仕入れや売り上げの管理、ほかのバイトたちのシフト作成、クレーム対応までやらされた。

「責任を負うことが多くて、肉体的にも精神的にもきつかった。時給は1000~1100円なのに、なんでこんなことまでしないといけんのじゃって思ってました」

 しかし、お金は稼がなければならない。ユウタさんは認知症の祖母の介護をしながら大学に通っており、生活費は全額、学費も半分は自分でまかなっている。プロを目指して音楽活動にも打ち込んでいるため、その費用もかかる。そこで、1500円の時給に魅かれて、今年7月から家電量販店でのバイトを始めた。

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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