さらに、DNAのメチル化というプロセスも観察されました。これは、私たちの遺伝情報をコントロールする仕組みで、健康状態に大きく関わります。アンチエイジングの世界では、「エイジングクロック」と呼ばれ、生物学的な年齢のことを指します。HRWを飲んだグループでは、このメチル化が良い方向に変化していました。

 そのほかにも、HRWを飲んだ人々は脳の働きや筋力、特に椅子から立ち上がる動作が改善するなどの効果が見られました。これらの結果から、HRWが老化のさまざまな側面に良い影響を与える可能性があり、日々の健康維持やアンチエイジングへの利用の可能性が考えられています。

 このようにHRWは、アンチエイジングの分野では有望な武器の一つです。しかしながら、水素の濃度はどれくらいが最も効果が高いのかや、長期間摂取した場合の安全性、人種差を超えた効果など不明な点も多数あります。今後の研究成果に注目しながら、慎重に日常生活に取り込んでいくのがいいでしょう。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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