おかげで「ブギウギ」全体に流れる空気も、すっきりととらえることができるようになった。鈴子の実家「はな湯」のドタバタを見ても笑えなかったのだが、梅丸少女歌劇団初の単独公演が発表されるシーンで初めて笑った。団員が全員集められ、劇団の部長・青木(橋本じゅん)が「こちら、梅丸の大社長や」と紹介する。最後列で鈴子が「シャ、シャショーさんですか」と反応する。大熊が「シャショーやのうて、シャチョーや、一番エラい人やがな」とツッコむ。

 3カ月後に単独公演を開く、と発表すると「ほんまでっか」と真っ先に反応したのが、鈴子。「なんでおまえが言うねん」と青木がツッコむ。鈴子はどちらにも「すんません」と謝って反応する。最初は小声、2度目は真面目そうな声。その様子が可愛くおかしく、思わず笑ってしまった。

 鈴子のおっちょこちょいな様子は何度も描かれたが、進んでいく道が見えた上でのおっちょこちょいと、ただ何となくのおっちょこちょいでは全然違う。よかったー、意味がわかって。

 鈴子の「ほんまでっか」しか反応がなかったので、青木は団員に「何や、うれしくないんか」と言った。代表して橘が「いや、うれしいです」と答える横で、大和が声を出さずに泣いていた。「ああ、大和さんらしいな」。自然とそう思ったのは、蒼井さんの存在感ゆえだ。

 第2週の最後、鈴子は芸名・福来スズ子になった。いよいよ笠置シヅ子への道がスタートする。大和はこれからも、梅丸少女歌劇団の要として活躍していくに違いない。蒼井さんと趣里さんの芝居が見たい。そう思えるようになれて、よかった、よかった。

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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