もう一つの大きな問題点が制度の分かりづらさと不透明さだ。昨年初めて行われた際にも各スポーツ紙などでその仕組みの説明が紹介されていたが、一度読んだだけで理解するのは難しく、内容を覚えているファンも少ないはずだ。また経緯についても断片的にしか伝わらず、密室で行われたという感は否めない。選手の人生や生活にかかわることであるため、移籍対象になっていたかどうかを公開したくないという意図も分からなくはないが、分かりづらさと不透明感の解消は必要である。

 まず対象選手を増やす改善案としては球団から選手を提出する形ではなく、基準を満たした選手をNPB側でいったん全てリスト化し、球団はそこから一定数の選手をプロテクトして、残った選手は全て移籍対象とする方が望ましいのではないだろうか。そうすることで他球団から見て獲得したい選手が移籍市場に出る数は一気に増え、飼い殺しを防ぐという狙いもより明確になるはずだ。またプロテクトする選手についてはフリーエージェント(FA)の人的補償と同様に公表しないという形をとったとしても、対象選手の一覧は公開することによって不透明さもある程度は解消される。

 指名順についてはこの形であれば単純なウェーバー方式でも問題ないはずだ。1巡目は全球団の参加を必須とし、2巡目以降は逆ウェーバーで参加を希望する球団だけで行うという形にするのが良いだろう。対象選手の数が多ければ、この形でも2巡目以降に参加する球団も増えるだろう。

 新しく始まった制度のため、様々な意見はあると思われるが、新人選手を対象としたドラフト会議もスタート当初は毎年のようにルールが変更されており、試行錯誤しながら良いものにしていこうという努力は必要である。選手にとっても球団にとってもファンにとってもより良い制度となるように、今後も改善についての議論が活発に行われることを望みたい。(文・西尾典文)

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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