今回、俳優であり映画監督でもある奥田瑛二さんに初めてお目にかかった。週刊誌選句欄の選者も務める彼は、俳人でもある。腰を据えて話してみると、この男、筋金入りの「よもだ」であることが分かった。

 俳句を愛する者同士、子規について語り合おうという企画なのだから、子規の秀句名句を深掘りするものだと思っていたら、彼がいきなり取り出したのは、傾城や遊女を詠んだ句群。自ら、それらを「艶俳句」と名付け、それら一句一句から広がっていく映画的世界観について熱弁を振るい出した。

 子規が先輩の一念にくっついて遊郭に行った記述があることや、遊女を詠んでいる句があることは知っていたが、こんなに沢山詠んでいることは今回初めて知った。それもこれも、奥田瑛二という堂々たる「よもだ」との出会いがあってこその発見だった。

 そもそも、何かを表現する世界に身を置く者は、多かれ少なかれ「よもだ」でなければやっていけないのではないか。表現上のオリジナリティを追求するとなれば、人と同じ方向を向いていては見つけられない。究極のリアリティに徹するとなれば、呆れられるような集中力で一つのことに拘る必要もある。表現者にとって「よもだ」とは、一種の勲章であるのかもしれない。

夏井いつきさんの顔写真
夏井いつきさんと奥田瑛二さん
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