正岡子規(近現代PL/アフロ)

「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」。10月14日は、この句の作者、正岡子規の誕生日。この男、なにが凄いのか? 同郷の俳人・夏井いつきさんが、俳優・奥田瑛二さんととことんその魅力について語り合った『よもだ俳人子規の艶』(朝日新書)から一部を抜粋、再編集し、紹介する。

【写真】夏井いつきさんの写真をもっと見る

*  *  *

よもだという勲章

 正岡子規が生まれたのは伊予の国(現・愛媛県松山市)。私が今、暮らしているのも伊予の松山。俳都松山とも名乗っている。

 伊予の言葉に「よもだ」というのがある。

「あの人は『よもだ』じゃけん」とか「『よもだ』ぎり言いよる」とか、そんな使い方をする。「へそ曲がり」というか、「わざと滑稽な言動をする」というか、そんなニュアンスだ。

 皆さんは、子規の有名な横顔の写真をご存じだろうか。

 陰気臭い顔して、真横を向いて、特徴ある後頭部がぐりんと突き出している、あの白黒の写真だ。明治時代に写真を撮ることは贅沢の極みであったろうに、なぜ、横を向く? 誰もがそう思うに違いない。

 松山市立子規記念博物館名誉館長であった天野祐吉さんが「ソッポを向く人」という題名で子規について書かれた文章がある。

著者プロフィールを見る
夏井いつき

夏井いつき

夏井いつき(なつい・いつき) 1957年愛媛県生まれ。俳人。俳句集団「いつき組」組長。8年間の中学校国語教師を経て俳人へ転身。94年「第8回俳壇賞」、2000年「第5回中新田俳句大賞」受賞。創作活動に加え、「句会ライブ」や講演など、俳句の種まき運動の傍ら、MBS「プレバト!!」など各メディアで幅広く活躍。15年より初代俳都松山大使。主な著書に、『句集 伊月集 鶴』『夏井いつきのおウチde俳句』(共に朝日出版社)、『夏井いつきの世界一わかりやすい俳句の授業』(PHP研究所)、『子規365日』(朝日文庫)、『瓢簞から人生』(小学館)など。

夏井いつきの記事一覧はこちら
次のページ