FA宣言してメジャー挑戦の夢を叶えたり、国内の他球団に移籍する選手が多いなかで、諸々の事情から、FA権を行使して古巣にUターンした選手もいる。
巨人時代の小久保裕紀とサブローがよく知られているが、ほかにもFAで古巣に復帰した男たちが何人かいる。
FA宣言したものの、獲得に動く球団がなく、最悪の場合は引退も、という紆余曲折を経て、古巣復帰をはたしたのが、阪神時代の平野恵一だ。
2010、11年と2年連続で二塁手のベストナインとゴールデングラブ賞に選ばれた平野は、12年は攻守とも精彩を欠き、阪神移籍後5年間で最低の打率.245、1本塁打、24打点で終わった。
オフの球団との残留交渉で、平野は2000万円ダウンの年俸1億7000万円の単年契約(文中の金額はいずれも推定)を提示されたが、3度にわたる交渉もまとまらず、11月10日、ついにFA権を行使した。
金額的には妥当な数字ながら、すでに西岡剛の入団が決定的で、福留孝介も入団濃厚だったことから(その後、ともに入団)、二塁、外野の両方でポジションが重なる平野は、出場機会が減ることに危機感を抱いていた。
「いろいろ悩んだ結果、決断しました。他球団の評価も聞かせていただき、阪神も含めて、自分を一番必要としてくれる球団でプレーしたい」と自らの希望を発信した平野だったが、手を挙げる球団はなく、西岡争奪戦で阪神に敗れた古巣・オリックスも当初は「行く予定はない」(横田昭作球団本部長)と獲得を否定した。
移籍先が決まらない平野は、阪神との再交渉に臨んだが、FA選手には減額制限が適用されないことから、50パーセントダウンの年俸9500万円を提示され、態度を保留。この条件をのめなければ、最悪引退の可能性もあった。
だが、窮すれば通ず。12月になって、オリックスが救いの手を差し伸べてきた。内外野をこなせる平野を森脇浩司新監督が「ファイティングスピリットがあるし、貴重な選手」と高く評価。二塁手・後藤光尊の左膝不安も追い風となり、12月25日、年俸1億5000万円プラス出来高の2年契約で6年ぶりの古巣復帰が決まった。
14年に120試合に出場するなど、オリックスで3年間ベテランの存在感を示した平野は引退に際し、「幸せな野球人生で、“やり切った”という感じはあります」と振り返っている。