――「わからないものはわからないままでいい」とも考えている。
真木:たとえば娘と一緒にいて、「なんか隠したな」って思うことがあっても、それはそのままにしておく。だって見られたくないものでしょうから。
世の中の人っていろんなことを知りたがるけど、全部知ったからって何が変わるの?って思うんです。知らないことがあるからこそ、楽しいんじゃないかな。だから、貪欲にいろんなことを知りたいとは思いません。
たぶん私も、誤解されているパブリックイメージとかあると思うけど……。でも、そのまま思ってもらっていても構わないし、もしどこかで「こういう一面もあるんだ」って思ってもらえたらそれでもいいし。いろんな人に、すべてをわかってほしいという思いもないんです。
曲を聴いて泣きゃいい
――劇中で、かなえが「もし時間が巻き戻しできたら」とつぶやくシーンがある。だが、真木自身は「過去に戻りたいとは思わない」と言い切る。
真木:過去に戻れるボタンがあっても、押さないと思う。「これがあたしの人生だから」って。それは決していつも今に満足しているというわけではなくて、ただ前を向いていたいだけなんです。そうすれば未来で変えられるかもしれないし、取り戻せるかもしれない。もしダメでも、何か変化があるかもしれない。そう思っているから、過去に帰ってやり直さなくていいんです。
――私生活では、一人娘を育てる母親でもある。俳優として役を生きながら、子育てをする日々のバランスをどう取っているのだろうか。
真木:毎日いっぱいいっぱいで、「一個ぐらい、誰かやってくんないかなぁ」って思ったりもします(笑)。でも、頑張りすぎて思いつめないようには意識しています。昔から完璧主義なところがあるので、真面目な私が出てくると、「もっとできたんじゃないの」って自分を許せなくなっちゃうから。
そう思えるようになったのは、周りでうまく肩の力を抜いている人を見たことも大きいです。うまくいかなくても、「まぁいっか」でいいんです。たしかにそうかもと思えるようになってから、少しずつ気が楽になりました。
気持ちがつらくなったときは、夜にそういう曲を聴いて泣きゃいいんですよ。で、朝になったらまた頑張ろうって。ちょっとぐらい自分を甘やかすという柱もあっていいと思っています。
(構成/編集部・福井しほ)
※AERA 2023年10月9日号