真木よう子(まき・ようこ)/1982年生まれ。無名塾を経て、2001年に「DRUG」で映画デビュー。ドラマ「問題のあるレストラン」、映画「焼肉ドラゴン」など数々の作品に出演。映画「アンダーカレント」では主演を務める(撮影/加藤夏子)
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 豊田徹也の同名漫画が原作の映画「アンダーカレント」で主人公・かなえを演じる。演じること、人を理解すること、母親であることについて語った。AERA2023年10月9日号より。

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――誰もが心の奥底に「うそ」を秘めていて、閉じ込めた気持ちと生きている。そんな心の動きを丁寧に描いた映画「アンダーカレント」が10月6日に公開される。主人公の関口かなえを演じた真木は、もともと原作漫画を愛読していたという。

真木よう子(以下、真木):こういう作品、好きなんですよね。「自分の周りにもいるかも」って考えさせられるような、日常でもありそうなヒューマンドラマが好きです。言葉ではっきり言うのが難しいんですけど、『アンダーカレント』は20代で初めて読んだときから、自分のなかでずっとモヤモヤと残っていて。でも、決して嫌なモヤモヤではないんです。忘れっぽい私が覚えているくらい好きな作品だから、オファーがきてうれしかったし、断る理由もなかったです。

――家業の銭湯を継ぎ、店主として働くかなえ。ある日、夫がいなくなったかと思えば、謎の男が現れ、共同生活が始まる。ストーリーが進むにつれ、知らなかった夫の姿にたどりつく。衝撃的な出来事が続くなかでも、変わらず日常を生きるかなえは、どこか凛としている。

「誰か」を生き続けたい

真木:どんなことが起きても逃げずに向かい続ける人です。そこに共感できたし、すんなり役に入ることができました。

 かなえを取り巻くものを羅列すると、たしかに衝撃的なことばかりが起きています。でも、かなえにとっては日常のなかで起きた出来事で、ある程度年齢を重ねてきた大人にとっては、自分と重なる部分があると思います。

 私も演じるなかで、「秘密にしているわけではないけど、誰にも言ってなくて自分のなかで突っかかっていたな」って思い出したりして。他の人に思いをはせたり、大切な人のことを考えられたりするきっかけになるとうれしいです。

 まだ考え中なんですけど、「逃げない」というのは自分と相手、どっちが大切なのかということかなと思っていて……。ある日、お父さんが家庭を捨てて、自分の人生を歩みだしたとしても、私はそのお父さんを責められない気がするんです。

 以前、自分の未来を考えたときに、「もっと自分のために生きてもよかったなって思うんじゃないか」と怖くなったことがあります。私の場合は家族を傷つけたくないから踏み切らないだけで、それを選んだ人を自分勝手だとは言えないと思いました。

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