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 日本経済は長きにわたり低迷し、賃金上げが最大の問題になっている。賃金が上がらない要因として、「生産性が低さ」がしばしば指摘されるが、そもそも生産性とは何か、なぜ上昇しないのか。どうすれば生産性を高められるのか。経済学者の野口悠紀雄氏の著者、『プア・ジャパン 気がつけば「貧困大国」』(朝日新書)から一部を抜粋、再編集して解説する。

【表】生産性や給与が伸びている会社はこちら

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生産性が上昇しないから賃金が上がらない

 日本で賃金が上がらない基本的な理由は、生産性が上昇しないことだ。以下では、長期的な観点から、日本経済の生産性がどう変化するかを見よう。

 ここで、「生産性」とは、就業者一人当たりの付加価値を指す。付加価値とは、売上高から原価を差し引いたもの(粗利益)にほぼ等しい。

 付加価値は、賃金を支払う原資になる。そして、付加価値の中での賃金の比率(賃金分配率)は、生産の技術的関係によってほぼ決まるので、ほぼ一定だ。

 したがって、就業者一人当たり付加価値(生産性)が、賃金の動向を決めることになる。

 なお、すべての部門の付加価値を合計したものが、国内総生産(GDP)になる。

 以下の分析に用いるデータは、「2021年度国民経済計算」の経済活動別国内総生産と就業人口数(暦年計数を用いる)。なお、国民経済計算で「保健衛生・社会事業」と呼んでいる部門を、ここでは、もっと分かりやすく、「医療・介護」と呼ぶ。この分野は、労働力統計の「医療・福祉」とほぼ同じだ。

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経済全体の生産性が上昇しない理由