こうなる大きな原因は、製造業就業人口が減少する反面で、医療・介護の人口が増えるからだ。専門科学技術の従業員数は増えるのだが、生産性の水準があまり高くない。

 なお、生産性が高い分野として、情報通信がある。しかし、すでに述べたように、この部門の就業者数は少ないので、経済全体の生産性に対してあまり大きな影響を与えることができない。金融も生産性が高い。しかし、就業者数は減少しており、生産性の伸び率もマイナスになっている。

デジタル化で生産性を高め、産業間移動を促進する必要

 医療・介護分野での需要は今後も増大することから、この分野での就業人口が増えることは避けられない。その生産性を上昇させることが重要だ。そのため、リモート医療を積極的に導入する必要がある。

 その他の産業についても、デジタル化を進めることによって、現在は生産性が低い産業の生産性を高めることが必要だ。

 経済全体の生産性を高めるためのもう一つの重要な施策は、生産性の低い産業から高い産業への就業者の移動を図ることだ。生産性が高い分野としては、高度専門分野や情報通信分野が考えられるが、それだけではない。

 宿泊飲食業の生産性はきわめて低い。ここから他産業への就業者が移動すれば、日本経済の生産性は上がる。この分野では、コロナ禍で大量の休業者が発生した。しかし、雇用調整助成金で3年間にわたって給付を続け、労働の移動を妨げた。雇用調整助成金に関しては、不正請求が問題とされている。確かにそれは問題なのだが、もっと大きな問題は、経済の生産性向上を阻害したことだ。