就業者の伸びは、需要側の条件を反映していると解釈できる。需要が増えれば、それに応じて供給を増やすため、企業は就業者を増やすからだ。それに対して、生産性の伸びは、供給側の条件を反映していると考えられる。企業が新しい技術を活用すれば、効率的に供給できるからだ。
医療・介護分野の就業者数は、2040年において1751万人になる。製造業の2倍を超え、医療・介護は日本最大の産業になる。
現在の我々の感覚からすると、これは、異様としか言いようのない産業構造だ。しかし、過去の就業者増加の趨勢が将来も続くと仮定すれば、このようなことになるのだ。すでに述べたように、就業者数の伸びは、医療・介護に対する需要増加の反映であることを考えれば、この仮定は自然なものであり、少なくとも第一次近似としては受け入れざるをえないと思われる。
なお、「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(内閣官房・内閣府・財務省・厚生労働省、2018年5月」)によると、2040年において、医療、福祉分野の就業者数は1065万人だ(この分析における「医療、福祉」も、労働力統計における「医療、福祉」と同じだ)。
厚生労働省の推計は、過去の伸び率に比べて、伸び率が低下すると考えていることになる。果たしてそうなるだろうか?
生産性は、現在よりも低下する
2020年から2040年の期間において、付加価値の年平均伸び率は、0.7%となる。しかし、従業員数が年平均0.6%で増加するので、生産性(就業者一人当たりの付加価値)の年平均成長率は、0.1%にしかならない。つまり、年率1%の賃上げも期待できない。このように、過去の期間に比べて、賃金の伸び率は低下することになる。