撮影:米田堅持

 潜水士を目指す海上保安官の多くは20代の巡視船艇の乗組員である。彼らは日々、体を鍛え、各管区で開かれる「潜水研修候補者選考会」に出してもらえるようにアピールする。選考会出場には十分な体力だけでなく、上司の推薦も必要とされる。

「というのも、救難現場では2人1組のバディで行動するなど、チームワークが大切だからです」

 選考会では年齢や健康状態、体力、泳力等によってごくわずかな上位者のみが研修生に選抜される。そして、年に2回、全国11管区から選抜された先鋭約20人が広島県呉市にある海保大にやってくる。彼らはここで約2カ月間の潜水研修に挑むのだ。

「毎回、途中で脱落する研修生が1人か2人は出てきます。『プール実習』の試験に合格しない場合もありますが、研修についていけなくなって、自分から『出直してきます』という子もいます」

 まれに、水に入れなくなってしまう研修生もいるという。

「あまりにもずっと泳いでいるので、水が怖くなってしまうんです」

厳しい訓練は絵にならない

頭の中まで筋肉?

 研修前半のプール実習では、水中での安全管理や動き方など、潜水士としての基礎をたたき込まれる。それはまさに映画「海猿」の世界だという。

「座学もありますが、基本的に朝8時前後から日暮れまで、台風接近を除けば、天候にかかわらず、ひたすら走ったり泳ぎ続ける。彼らを撮影していると、『まだ泳ぐんだ』と、こちらがうんざりしてしまうほどです」

 泳ぎの基本は足ひれをつけて泳ぐ「ドルフィン」である。

「まず最初にドルフィンで、がーっと1500メートル泳いで体をほぐす。これが速いんですよ。こちらは駆け足で撮らないとついていけないくらい。それから場合によってはクロール、背泳ぎ、バタフライで各100メートル泳ぐ」

 その後、5キロの重りを両手に持って15分間同じ場所で泳ぎ続ける「立ち泳ぎ」などの訓練が行われる。

「これがすごい。水に沈みそうな研修生の表情は必死だし、息はあっぷあっぷだから、水しぶきがバンバン上がる」

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