けちょんけちょんに言われても、なぜか腹が立たない。確固たる知識と信念がある人の口から出る言葉には説得力がある。
下世話な話だが、人一倍働いてきて、お金はかなり貯まっただろう。ところがあっさり、こうおっしゃる。
「自分のお金には興味がありません。お金は、私にとってゲームのチップみたいなものです。将棋の駒や碁石が増えたとしても、それでポケットを膨らませて喜んだりしませんよね。
必要なものにお金を使って、持て余しもせず、足りなくもならず。やりたいことができれば、それでいい」
お金に感情を込めてはいけない。単なるゲームチップなのだから。
「もっと合理的に扱ってください。お金って単なる手段ですよ」
食道がんと告知された
山崎さんは2022年8月に食道がんと告知された。今年の春に転移が判明している(ステージ4)。
「自分の『予想』と『希望』で分けて考えると、悲観的な毎日ではなくなります。1年後、今と同じようにいられるかと聞かれれば、自信はありませんが……。
1年くらい時間が使えるなら会いたい人に会えるだろうし、本の2〜3冊は書けるだろうと。ここで『私の娘が大学に入るまでは生きていたい』などの『希望』を『予想』に混ぜると、予想自体が揺らいできて、計画がゆがむし精神的にも不安定になる」
山崎さんが構想している本とは?
「息子に伝える働き方と金の扱い方の本。学習研究社から出版します。それと、漫画でわかる『資本論』の解説。これはもう書いた。あとは楽天証券の『トウシル』で書いた記事のうち、今も使えるものが440本ほどあるので、書き直して出したい」
今は自分の日常を大事にしている。
「大谷(翔平)くんが今日もホームランを打ってくれたら、幸せ。詰め将棋が解けたら、それも幸せ。一生の思い出になるようにパーティーを開くとか、そういう特別なイベントはいらない。
酒を飲んだりおいしいものを食べたりすることが楽しみだったけど、がんで酒がダメになって、食べられる量が少なくなって。なんだか好きなことを順番につぶされているような感じがしたな。禁酒は、案外すんなりできましたよ」