では、初心者向けの資産形成について、「山崎節」を聞いてみよう。
「初心者と富裕層で適切な運用商品は違うようなイメージがありますね。でも効率のいい商品があれば富裕層も欲しがるし、初心者もそれを買えばいい。
違うのは投資する金額とリスクの大きさだけ。若い人にはこれがいい、退職者にはこれがいい、などと年齢によって変わることもありません」
成長投資枠はつみたて投資枠と同じものを買えばいい
痛快である。2024年1月開始の新しいNISAについても釘を刺した。
「成長投資枠ではつみたて投資枠と同じものを買えばいい。区分の名前が違うからといって違う投資をする必要はありません」
資産のうち「守り」をコア、「攻め」をサテライトとした資産配分を勧める専門家は少なくないが、これにも否定的だ。
「低コストな全世界株式のインデックス型投信だけを買えばいい。サテライト投資は不要。コアがなぜコアなのかを考えたら、理由がわかるはずです」
「予想」と「希望」を混同してはいけない、とも強調した。「毎月の投資可能額とリタイア時の必要資産からリターン目標はこれぐらい、そのための金融商品はコレ」などの資産形成プランをよく見かけるが……。
「リスクを見ず、希望リターンで資産配分を決めているだけ。ファイナンシャルプランナーがよくやるアドバイスです。40歳で年収600万円、貯金1000万円などというもっともらしい数字をもとに円グラフを作って。年齢や収入、貯金残高で最適な資産配分が決まるわけがないでしょう」
いつまでそんな無駄な提案をしているのか、と。「ファイナンシャルプランナーだけでなく、新聞社もダメですよ」。
来た、こちらに矛先が。
「たとえばリスクとリターンの話。『運用期間が長くなるとリスクが小さくなる』という説明をよくされますが、金融理論的に間違いです。『ドルコスト平均法』も、気休めにしかなりません。
ある記者に基本から仕込んでも、時が経つと何も知らない後輩が取材しに来て、またドルコスト平均法の話になる。新聞記者は知識を次の世代の記者に継承しないんですか? 個々で取材すれば真実にたどり着けるとでも?」