ジャニー喜多川氏の遺産を相続した藤島ジュリー景子氏

 だが、9月7日に開かれた会見で、新社長の東山紀之氏は「今回は法を超えて、救済、補償というものが必要」と発言。同席した木目田裕弁護士も「厳密な証拠を求めて、法的に厳密にするよりは、もう少し緩やかに(略)法を超えてきちんと補償してまいりたいと考えています」と補足した。その点を踏まえて、山岸弁護士はこう続ける。

「東山社長と木目田弁護士の発言から考えると、『誰に損害賠償を請求するのか』『消滅時効が成立しているのではないか』はひとまず考えなくてよさそうです。そのため、もし提訴ということになれば、ジャニー喜多川氏の遺産相続人と、法人としてのジャニーズ事務所の両方を訴える弁護士が多いと考えられます」(同)

 再発防止特別チームは被害を詳細に調べており、調査報告書には「1970年代前半から2010年代半ばまでの間、多数のジャニーズJr.に対し、上記のような性加害を長期間にわたり繰り返していたことが認められる」「被害者のヒアリングからは、少なく見積もっても数百人の被害者がいるという複数の証言が得られた」などの記述がある。

「日本で懲罰的損害賠償の法制度が存在しないとはいえ、懲罰的な観点が賠償金額に反映されることはあります。もし提訴が行われたとして、普通なら慰謝料など損害賠償は1人あたり数百万円というところでしょう。しかし今回はジャニーズ側の社会的責任などを重視し、1人あたり1000万円に達しても不思議ではありません。被害者の数だけでも前例のない大事件ですが、仮に300人の被害者に1000万円の賠償金が支払われたとしたら合計額は30億円に達します。金額も前例がないと言えます」(同)

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