最近、ネットニュースなどで「懲罰的損害賠償」という言葉を目にすることが増えた。実際に被った損害の賠償だけでなく、加害者に制裁を加える目的の賠償も認めるという法制度だ。
「主に英米法で用いられており、日本の司法制度には存在しません。日本でも話題になった有名な判例のひとつにマクドナルド・コーヒー事件があります。1992年、ニューメキシコ州に住む79歳の女性がマクドナルドで朝食を購入し、自動車内で食べようとしたところ、コーヒーがこぼれて火傷したという事件です」(司法担当記者)
火傷はひどく、面積は全身の約16パーセントに達したという。1週間の入院が必要だったため、治療費は約1万ドル(約148万円)に達した。女性は治療費の負担などを求めたが、マクドナルドは800ドル(約11万円)を払うとの回答だった。
「納得できない女性がニューメキシコ州連邦地方裁判所でマクドナルドを提訴。法廷で専門家がコーヒーの温度は熱すぎたと指摘したほか、マクドナルドが徹底抗戦の姿勢を示したことで、陪審員の印象が悪化しました。痛々しい火傷の写真が決定打となり、陪審員は16万ドル(約2300万円)を本来の賠償額とした上で、さらに懲罰的損害賠償として270万ドル(約4億円)を認定しました。ただ最終的には双方で和解が成立し、マクドナルドは50万ドル以下(約7400万円)の和解金を支払いました」(同)