鈴木大介(すずき・だいすけ)/1974年、東京都生まれ。94年、20歳でプロ棋士としてデビュー。今年5月に日本プロ麻雀連盟に入会(写真:YouTubeチャンネル「二刀流・鈴木大介 Dの流儀」提供)
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 二つの仕事の「二刀流」で成功しているのは大リーグの大谷翔平選手だけではない。棋士の鈴木大介九段はプロ雀士としての活動も始めた。時間や脳を使い分け、異分野のタスクを好循環でこなす達人の仕事術に迫った。AERA 2023年10月2日号より。

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 今年5月に日本プロ麻雀連盟のプロ資格を取得した棋士の鈴木大介九段(49)。プロの世界で史上初の「将棋」と「麻雀」の二刀流に挑む。異能の勝負師の仕事術や思考回路はどうなっているのか。

 小学生の頃からプロ棋士を目指していた。小学5年生の終わりに「小学生名人」になり、棋士養成機関「奨励会」に入会。2年後には初段に。だが、奨励会に入会してもプロ棋士(四段)になれるのは約1~2割。20歳で四段に昇段するまでの苦悶の日々を支えてくれたのが麻雀だった。

「正直、将棋のプロになれなかったら麻雀のプロになろうと思っていました。それが心の支えでした」(鈴木さん)

 麻雀も「特技」という自負はあったが、あくまで「趣味」だった。転機は今年3月。尊敬するプロ雀士から、プロになりませんか、と誘われた。受け流すつもりだったが、妻に「挑戦すればいいじゃない」と背中を押された。

チャンスを楽しむ

 その言葉をきっかけに、「好きなことに挑戦するのは自然なこと。今はそれが許される時代」とモードが切り替わった。

「この年齢になれば、自分の実力を試す機会が与えられるだけでも、すごく恵まれたことだと分かっています。このチャンスを楽しみたいと思いました」(同)

 今年6月に3期6年間務めた日本将棋連盟常務理事を退いた。営業などもこなし、理事の職務を「やりきった」達成感がある。これも麻雀との二刀流を決断するステップになった。プロ雀士になってからは体力をつけるためスポーツジムにも通い始めた。

「体重が数キロ落ちたら思いのほか、将棋の対局の際の正座が楽になりました。これも相乗効果の一つでしょうか」

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