横になっていてもしんどくて眠れない。どの姿勢も違う気がして寝返りばかりうっている。身の置き所がないとはこのことだ。フリーランスゆえ代わってくれる人がいないということも身にしみた。そんなこんなであれこれ心配しているとさらに気分が悪くなってくる。だが実際、水を飲むだけで精一杯のこのような状態では何一つとしてすることができないのである。
私は心の底から確信した。「体調が良い」ということほどこの世に大切なことがあるだろうか。
体調さえ良ければなんだってできる。っていうか何にもしなくたって、体調が良くて飯と汁がウマければそれそのものが幸せである。つまりは人生における最優先課題は、お金を稼ぐことでも人から評価されることでもない。何より「体調を整えること」でなければならない。あとのことはそのオマケである。年齢的にも、そのように意識して初めてその宝が得られるのだと肝に銘じるべきである。
そう考えると、これから見直すべきは自我のありようであろう。人に求められるというのは麻薬で、それに応えようとすることと、それに執着することは紙一重。今回の病は執着がもたらした結果のような気がしている。
※AERA 2023年9月25日号