言葉への強い知的好奇心を感じさせるエピソードだが、とはいえ、受験勉強がはじまる前はマンガも愛読していた。そのため、周囲の友だちと比べて変わっている自覚は一切なかった。
「自分にギフテッド的な傾向があるか、子どものころは自分では全然わからなかったんですよね。辞書は好きで読んでいただけで、勉強だとも思ってませんでしたから」
ただ、子ども時代を振り返ってみると、ギフテッドらしい面もある。例えば、「想像性OE」はその1つだ。
ギフテッドに広く共通して見られる特性として、過度激動(Overexcitabilities、以下OE)と呼ばれるものがある。神経の感受性が増すことによって、通常よりも刺激を生理的に強く経験する性質を指し、「想像性OE」はその1つの特性だ。
想像力の強さは一般的に称賛されやすい資質ではあるものの、幼い子どもにとっては大変な面もある。竹中さんはこの「想像性OE」が強く、実際には起きないことを想像して、恐怖にさいなまれることが多かったようだ。
「例えば、火山の噴火の映像をテレビで見ると、その日の夜は『もし、近所にある比叡山が爆発したらどうなるのかな?』と頭の中でシミュレートしていましたね。『もし噴火したら、鴨川は防波堤になるのかな?』『マグマを遮断するのは、さすがに無理かもしれない……』と真剣に考えて、眠れなくなっていたんです。今なら調べれば比叡山は火山ではないことがわかりますが、当時は家にはパソコンもなくて……不安になって、泣いたりしては、何とか折り合いをつけている状況でした」