ギフテッドに関する専門書によると、ギフテッドの子どもの多くは、想像上の友達やペットがいたり、複雑な構想や劇的なドラマを思い描くことを好むという(『ギフティッド その誤診と重複診断』)。このような想像力の強さは、創作に生かすことができたり心の癒やしになったりすることもある一方で、心に過度な負担をかける場合もある。
また、竹中さんの場合は、父が難病患者だったことも、不安に傾きがちな心に影響を及ぼした。父が30歳の時に遠位型ミオパチーという、筋肉が障害される疾患だと診断されたのだ。日本に400人程度しかいない難病だった。
「きちんとケアをすれば長生きできる病気ではあるのですが、当時は父から病名をはっきり伝えられていませんでした。両親としては子どもたちを不安にさせまいと考えたんでしょうけど……。病気の父と一緒に暮らしていると、『他の家のお父さんよりも早く死んでしまうんじゃないか』と不安になって、あえて父が亡くなった時のことを脳内でシミュレーションするようになりました。不安だからこそ何回もやって、いつか来る現実に対する抵抗力を上げようとしていたんです」
なお、遠位型ミオパチーは遺伝性疾患だが、父親由来の遺伝子と母親由来の遺伝子の両方に変異がある場合にしか発症しない疾患だ。だから、竹中さん自身が将来発症する可能性はなかったが、幼いころはそこまでわからなかった。