ギフテッドと呼ばれる人たちがいる。高い知性や能力を発揮する一方で、発達の偏りや気性の激しさなど、さまざまな困難を抱えるケースも多い。好評発売中の書籍『ギフテッドの光と 影 知能が高すぎて生きづらい人たち』(朝日新聞出版)では、そんなギフテッドたちの声を取り上げてきた。社会福祉法人で不登校・ひきこもり支援を行っている竹中辰也さんもその一人だ。小学生時代に広辞苑を通読。130を超えるIQを有するが、自己評価は決して高くない。その背景には、特殊な家庭環境と、ギフテッドに広く見られる強い感受性による困難があった。
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京都市で、3人きょうだいの長男として育った竹中さん。幼少期から本が好きな子どもだった。
「母によると、昔からとにかく本を読んでいたそうです。ピーターパンやウルトラマンの本も好きでした。アメリカに住むおばが送ってくれた英語版の『3匹のこぶた』を日本語版と見比べて、『この言葉はこういう意味なのかな?』と推し量りながら読むのが、推理ゲームのようで楽しかったのを覚えています。中学受験の勉強が始まった小4からは、家庭内の教育方針が急に『マンガやテレビはダメ。でも新聞や辞典は読んでもいい』と変わりました。そこからよく読むようになったのが広辞苑です。広辞苑って、実は図版なども多く載っていて、結構おもしろいんですよ。結局、小4から小5にかけて、『あ』から『ん』まで読み通しましたね。他に娯楽もなかったので、『こんなに言葉ってあるんだな』と思いながら、毎日ずっと寝る直前まで読んで、広辞苑を枕にして眠りについていました」