しかし、こうした自らのミスや運の悪さによる失点がなかったとしても、22点差による勝敗はひっくり返らない。一番の敗因は、ノートライに終わった攻撃力ではないか。
前回対戦した時に苦しめられたスクラムは、稲垣啓太、堀江翔太(ともに埼玉パナソニックワイルドナイツ)、具智元(コベルコ神戸スティーラーズ)という先発のフロントロー3人が後半に交代するまでは大健闘。攻撃の起点が安定していた前半に何度かイングランド陣内で好機を迎えたが、キックミスなどでトライに繋げられなかった。後半には松島幸太朗(東京サントリーサンゴリアス)のカウンター攻撃でイングランド陣内深くまで一気に攻め込んだが、ここでもボールを前に落とすミスで逸機した。
試合全体を通じては、イングランドの速く前に出るディフェンスに対抗するためか相手のディフェンスラインの裏に落とすキックなど、これまでになくキックを多用したが、キックの高さと距離が追いかける選手と合わず、再獲得できずに効果的な攻撃とはならなかった。また、ボールを展開しても、パス自体は繋がっても相手の防御網を崩したり破ったりするには至らず。松島や途中出場のディラン・ライリー(埼玉パナソニックワイルドナイツ)という突破力のある選手が何度か単発でビッグゲインしただけだった。4年前、不動の司令塔だった田村優(横浜キヤノンイーグルス)がチームを優位な形に動かし続け、複数選手のユニットで崩し、突破して、トライを奪っていたのとは対照的だった。
日本vsイングランド戦の前夜、同じスタッド・ド・ニースでプールCのウェールズvsポルトガル戦が行われた。ポルトガルの闘志あふれるディフェンスでウェールズはリズムをつかめず、凡ミスを連発。一方、ポルトガルも何度かビッグゲインをしたものの最後にミスが出てトライまでつながらない。前半終了直前、ポルトガルは自ボールのスクラムを得ながらも、ここでの反則をキッカケにウェールズにトライを許してしまった。ポルトガルは後半も切れることなく戦い、トライも挙げたが、80分を過ぎてからウェールズに4トライ目を許して、結局は8-28で敗れた。
6カ国対抗を戦う強豪チームに対して相手の思い通りにはさせないファイトを見せ、得点機も何度か作るが、詰めを欠いてトライは奪えない。前半終了前に無用な反則で失点。後半はじわじわ差を広げられ、試合最後のプレーで相手にボーナス点の対象となる4トライ目を献上し、結局は20点台の差で敗れるーー。日本代表チームの戦いぶりはポルトガル代表のそれに見事に重なる。日本はイングランドやウェールズなど従来の「ティア1」国とともに世界最上位グループの「ハイパフォーマンスユニオン」に入ったが、ワールドラグビー(ラグビー競技の国際統括団体)が認定した立場はともかく、ピッチ上での実力はまだポルトガルなどと同じ「ティア2」ということだろう。