ヤクルト・内山壮真

 球団史上初のセ・リーグ3連覇を目指しながら、9月に入ってリーグ優勝、クライマックスシリーズ進出ともに可能性が消滅したヤクルト。現在は借金25を抱え、中日と5位を争う状況になっている。

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 だが、苦しいシーズンの中にも、投打ともに光明はある。「投」でいえばその筆頭に挙げられるのが、先発として小川泰弘、サイスニードに次ぐチーム3位タイの6勝をマークしている小澤怜史(こざわ・れいじ、25歳)だろう。

「最初の目標は1年間一軍で投げることだったんで、最低限できたかなと思います。まあ去年よりは勝てて、ある程度イニングも投げれたんで、そこは良かったと思いますね」

 ヤクルトに移籍して3年目のシーズンを、小澤はそう振り返る。2020年にソフトバンク戦力外となって12球団合同トライアウトを経て育成契約で入団し、昨年は6月に支配下登録。一軍で10試合に登板し、先発としてプロ初勝利を含む2勝(1敗)を挙げた。

 今年はキャンプから先発としての調整を続けながら、チーム事情もあって中継ぎとして開幕を迎えたものの、6月から先発に配置転換。そこから3連勝を飾り、6月28日の巨人戦(盛岡)では6回コールドながらプロ初完封勝利を記録した。

 小澤の大きな武器が、右打者の懐にシュート気味に食い込むストレート。もともとはオーバースローだったが、ヤクルト移籍1年目に8月末の期限までに支配下登録されず、「このままじゃ(支配下は)無理だろうな」との思いからサイドスローに変えたことで、自然と今のような球筋になった。「今の真っすぐはあれが持ち味」と話す。

 オーバースローで投げていた頃からもう1つの武器だったフォークは、サイドでも感覚は全く変わらず、「落ち方はむしろ良くなっている」という。先発として投げるようになってからはスライダーのほか、カーブ、チェンジアップなども使って「緩急」を意識している。プロ初完封後は1カ月あまり勝ち星から遠ざかったが、7月30日のDeNA戦(神宮)、8月6日の中日戦(バンテリンドーム)と連勝。9月6日の巨人戦(神宮)でも6回1失点の好投で、今季6勝目を手にした。

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コーチも着目する小澤の“ハングリー精神”