ちょうど科学研究費制度の大改革があったときで、まず勉強から始まりましたけれど、やりがいがありました。前年から、神戸市の甲南大の理工学部教授も務めていたので、月曜から水曜は神戸市の甲南大に行き、木曜と金曜は東京の学振に行くという生活が3年ほど続きました。その間、母の介護もありました。
現在は動物学者の妹と研究
西村は基生研を退職したあと、甲南大学でペルオキシソームという細胞内小器官の研究を続けています。昨年も面白い論文を出したところです。およそ20年の岡崎との2拠点生活も終わって、京都で一緒に暮らしています。子どもたちはそれぞれ独立しました。
奈良女子大学と奈良教育大学が2022年4月に法人統合して奈良国立大学機構ができましたが、その教育・研究担当の理事にというお誘いは、本当に思いがけないことでした。お引き受けした動機の一つが、妹との共同研究です。妹は動物学者で、味覚や嗅覚の研究をしていて、神戸大学を定年退職してから奈良女子大で研究スペースを借りて仕事をしていました。その場所が、奈良国立大学機構の本部棟の隣だったんです。私たちはいまもそこで一緒に研究しています。
これが面白くて、実はシロイヌナズナはワサビの仲間なんです。ワサビの匂いで私たちは食欲を増すじゃないですか。でも、ハエは食欲をなくす(笑)。本当に面白い。いま論文を書きつつあります。
――研究が心底お好きなんですね。
私は、会議で皆さんの意見をまとめるようなことは苦手なんです。だから、実は教授になりたいと思ったことはなかった。京大に行ってからも役職はやりたくないと、最初は何もやらなかった。でも、60歳を過ぎたころから、学生や若者のためになることならやってみようと思い始めました。
いま、女性をもっと意思決定の場に、とよく言われます。確かに女性教員の割合が低いので、底上げももちろん大事ですが、研究が好きで、ずっと研究に没頭していたいという女性教授がいてもええんちゃうかな、と思うんですよ。女の人自身が選べるのがいいですね。