思わず父に「うちの近くの施設に移らない?」と聞いた貂々さん。返事はまさかの「いいよ」でした。

「関西に来たら、友達にも親戚にも会えなくなっちゃうよって言ったんですが、いいよって。考えてみればコロナ禍で、私以外に面会に来る人はいなかったんです」

理解するより動くしかない。金額、待機人数、場所、設備内容の四つを中心に探すことに。細川貂々さんが介護問題に直面するコミックエッセー『親が子どもになるころに』(創元社)より

 関西でホームを探そう! そう決意し、今度は高齢者ホームに詳しい知り合いに相談したそうです。貂々さんの条件は二つ。年金の範囲で暮らせること、介護しすぎないこと。勧められたのがケアハウス(軽費老人ホームの一種)でした。

「見学に行ったとき、施設長さんにも自分の条件を正直に伝えました。そしたら『私も同じ思いでこの施設を運営しています。金銭的な負担は少ないほうがいいし、入居者も自分でできることは自分でやってもらいたい』と言ってくれました」

 それから2年。ケアハウスでの生活が合っているのか、父は幻聴もなくなり、週2回移動販売のスーパーでの買い物を楽しむ生活だとか。

「認知症が重くなったら、同じ敷地にある特別養護老人ホームに移ることもできるので安心しています」

夫婦で入居できる施設どうして少ないの?

 貂々さんがホーム探しに奔走する姿を見て、夫の「ツレ」さんも動き始めました。ツレさんの両親も関東在住。パーキンソン病を患う義父を義母が一人で介護していたのですが、コロナでデイサービスが閉鎖。介護の負担は、高齢の義母の肩にズッシリとのしかかりました。

「ツレは私と父の様子を見て、『本当に困る前に入居させよう』と考えたようです。いろいろ調べて、実家近くの介護付き有料老人ホームに入居できました」

 ところが義母が「やはり自分がそばで見守りたい。家に連れて帰りたい」と言い始めたのです。

「寂しくなったんでしょうね。でも義母が一人で介護するのはもう無理なので、2人いっしょに入居できる施設を探しました」

 高齢者ホームは個室が多く、2人入居は高額の有料老人ホームが中心。粘り強く探すなかで、予算内の施設に空きが見つかりました。

「施設探しって、タイミングと運が大きいなぁって実感しています」

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