遠距離なのでホーム探しはネットが中心。「ここがいいかも」と思うと空きがなく、空いているところはめちゃくちゃ高い。そもそも父にお金はあるのか、いままで父の年金の額も貯金の額も聞いたことがなかった貂々さん。入院費を払う必要もあり、帰省したタイミングで実家の家探しをしたそうです。

細川貂々さんが介護問題に直面するコミックエッセー『親が子どもになるころに』(創元社)

「通帳は見つかったんですが、父はキャッシュカードを作っていなかったんですよ!」と衝撃の事実が発覚。金融機関に問い合わせ事情を説明して、入院費だけなんとか下ろさせてもらったといいます。

「お金のことってものすごく大事なので、元気なうちに絶対確認しておくべきです。父の場合、年金は少なかったのですが、堅実に貯蓄してくれていたので安心しました」

介護保険に関係する言葉は漢字が多くて難しい。しかも略すから覚えるのも大変です。細川貂々さんが介護問題に直面するコミックエッセー『親が子どもになるころに』(創元社)より

 父の介護申請を進めながら、実家近くのホームを3カ所見学。

「ネットではよさそうに見えていたのに、実際に行ってみると暗くて段差もあって……という施設もありました。見て確認するって大事です」

 半月後、待機申請していた介護付き有料老人ホームから「空きがでた」という連絡が。父は貂々さんの説明を聞いたあと、「とうとうきたか」とつぶやきました。長年住み慣れた家を離れ、ホームに入居することを承諾してくれたのです。

入居したホームは高額 これじゃ長生きできない!?

 しかし、入居1カ月ほどで貂々さんの中に「ここでよかったのか?」という疑問が芽生えたそうです。

「まずお金の問題です。毎月の支払額は、父の年金の倍。貯金の減りも早くて……これじゃ長生きできないじゃん!って」

 遠距離介護をする貂々さんの負担も次第に大きくなりました。

入居した有料老人ホームが高額であることは父も気づいていました。父のこの言葉をきっかけに施設を移ることを決断。細川貂々さんが介護問題に直面するコミックエッセー『親が子どもになるころに』(創元社)より

「手術の経過観察のために2カ月に1度通院するんですが、私はその付き添いのためだけに飛行機代をかけて上京する。時間とお金がムダだなぁって感じていました」

 もう一つ気になったのが、ホームでの手厚すぎるサポートでした。

「父は認知症ですけど、体は元気で足腰もしっかりしていたんです。なのにスタッフさんは靴や洋服の着脱まで介助してくれる。そのせいか父の足は急激に弱って、半年後には歩けなくなってしまいました」

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父に「うちの近くの施設に移らない?」と聞いた貂々さん