夫のうつ病、出産や子育て、PTA 活動、子どもの受験など、ご自身の体験を優しくユーモラスに描いてきた細川貂々さん。ベストセラー『ツレがうつになりまして。』で有名ですが、最近は認知症の父のホーム探しを描いたコミックエッセー『親が子どもになるころに』(創元社)が話題になりました。好評発売中の週刊朝日ムック『高齢者ホーム2024』では、コロナ禍&遠距離という二重苦の中で親の終のすみかを探す日々、その顛末をうかがいました。
【マンガ】『ツレうつ』細川貂々の父が認知症 老人ホーム入居後に父が放った衝撃の一言はこちら
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術後せん妄から認知症へ 独居の父をどうする?
「ホーム探しって、びっくりするくらい複雑で、少し調べたくらいでは何が何だかわからない。でも、介護問題は突然ふりかかってくるので、知らなくても当然なんです。知識のある人を探して、助けてもらうことってとても大切ですよ」
2020年の5月から始まったホーム探しの日々を、細川貂々さんはそう振り返ります。そもそもの発端は、その年の2月に父が前立腺がん手術を受けたことでした。
「手術は無事に終わったんですが、退院後に『術後せん妄』が起きたんです。高齢者は一時的に幻覚や妄想が起きることがよくあるらしく、父は幻聴と妄想でした。近所に『静かにしてほしい』とどなりこんだり、『お金を振り込めと脅されている』と郵便局に振り込みに行ったり、錯乱した行動が続いたんです」
折しもコロナ禍初の緊急事態宣言下。父は関東に一人暮らし、貂々さんは関西在住で、容易に駆けつけることもできません。警察に父を保護してもらい、そのまま入院させることになりました。
「病院でアルツハイマー型認知症と診断されました。手術前には気づかなかったのですが、ゆるやかに進行していたのかもしれません」
入院期間は最長で3カ月と言われ、貂々さんは退院後の父をどうするかという大問題に直面しました。
「10年前に母が亡くなってから、何度も同居をもちかけたんですが父は断固拒否。地元から離れたことのない人だったので、実家の近くの施設を探すことにしたんです。でも、親戚には叱られましたね。『親を捨てるのか』『長女の務めを果たせ』って。すみません、こういう事情なのでって、説明し続けました」