「DBは年金が得策」

 大江氏によると、DBは年金でもらうのが得策という。

「残高には2%程度の利息を会社がつけてくれますし、iDeCoと違って口座管理料などの手数料もかかりません。なるべく長い年金にして、しっかり利息で増やしてもらうのがいいと思います」

 ほかに、退職一時金や企業年金の使い方として最近注目されているのが「つなぎ資金」として使う策だ。

「WPP」という言葉を聞いたことはないだろうか。「Work longer、Private pensions、Public pensions」の頭文字をとったもので、「できるだけ長く働いて公的年金をもらう時期を遅くする『繰り下げ』を行い、終身でもらえる年金額を増やす」戦略を指す。「繰り下げ」をしている間、例えば60代後半に労働収入だけで足りない分を、企業年金を集中的に受け取ったり、退職金の一部を投入したりすることで賄う。

「少しずつ取り崩していくこれまでの戦略だと、何歳まで生きるかわからないから、どうしてもお金が尽きる不安がなくなりません。死ぬまで受け取れる公的年金を増やせれば、その不安を小さくできます」(大江氏)

AERA 2023年9月18日号より

 図の夫婦の場合で考えてほしい。夫の公的年金200万円は5年繰り下げると42%増えて284万円。妻の80万円と合わせると364万円で、年金だけで月に約30万円。夫婦2人なら生活できる金額だ。

 もう一つ、選択肢が増え、今後は複数の一時金を「時間差」で受け取る場合も増えるだろう。例えば60代後半は勤労収入で生活費を賄えるので、DBの受給を遅らせるといった場合だ(規約で「できる」と定められている場合に限る)。そんな時に適用される退職金のルールもぜひ覚えておきたい。

 まず一般的なのが「4年ルール」。ある一時金を受け取る場合、その前年以前「4年内」に別の一時金を受け取っていると、退職所得控除は先に使った勤続期間と重複する部分が使えなくなるとするもの。逆に言うと、二つの一時金を5年以上離して受け取ると、重複した期間を両方でダブルで使える。

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