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 老後資金の大きな部分を占めるだけに、「もらい方」でミスしたくはない。最適の受け取り方法を探っていく。AERA 2023年9月18日号より

【図表】賢くもらうには?退職金のもらい方のポイントはこちら

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 退職一時金、「確定給付企業年金」(DB)、「企業型確定拠出年金」(企業型DC)、iDeCo(個人型確定拠出年金)の中で自分が受け取れるものを知り、一時金か年金でもらうかを選択していく。退職所得税制の改正は政府の動きを注視する必要があるが、控除額を変える場合も「経過措置を伴いながら時間をかけて進めるのでは」との見方が多い。現行制度の大枠が維持されるなら、当面は控除枠を目いっぱい利用するのが「王道」だろう。

まず控除枠をフル活用

 大卒会社員で60歳受給の場合、勤続38年とすると控除額は2060万円。国の就労条件総合調査(2018年)によると、勤続20年以上の大学・大学院卒社員が定年時に受け取る退職金は平均1983万円だから、受け取るのが退職一時金だけなら多くの会社員が無税で全額を受け取れる。

 一時金2千万円で、他に企業型DCが500万円ある場合はどうか。この場合、両方を一時金で受け取ると課税されてしまうので、企業型DCを年金でもらう選択肢が出てくる。

 退職金制度に詳しい確定拠出年金アナリストの大江加代さんによると、昨年度からiDeCoが65歳まで加入可能になったため、iDeCoを使い、さらなる退職所得控除枠アップに挑む人も出ているという。

「60歳定年で再雇用の間はiDeCoに加入し、企業型DCを全額iDeCoに移換なさる方がいらっしゃいます。この場合、企業型DCの加入期間を、すべてiDeCoのそれと通算できるようになります。二つの加入期間を通算して、『20年超』のお得な部分を増やそうとしているのです」

 40歳から59歳まで企業型DCに加入していた人が、60~64歳までiDeCoに加入し、資産全額を移したとしよう。すると「加入期間」は25年となり、別々の場合と違い、20年超の「70万円」控除を5年分使える。もっとも、60歳時などに退職一時金を受け取った場合、後述の理由でこの手は使えないので注意が必要だ。

 一方、年金での受け取りを検討するのはどんな場合か。まず考えられるのはお金の管理が下手な人だ。一時金で巨額のお金を手にすると旅行に行きたくなり、投資の勧誘も来る。「誘惑」に勝てそうもない人は、少々手取りが少なくても年金を選ぶ方がいいかもしれない。

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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